※pixivより転載
※バトルガレッガ二次創作
---悪夢のような夜が開けた。しかし、朝陽に照らされ浮かび上がる光景は、未だ悪夢が過ぎ去った訳では無いことを告げていた。
昨日までは人々が集い、恋人たちが愛を語り合ったその場所には瓦礫の山が広がり、
そこかしこで無数のうめき声と赤ん坊の力ない泣き声が聞こえるのみ。
そして、やがてはそれさえも朝の光に溶け込み、消えていった。
まさかこんなことになろうとは。
=================
ーーー僕は兄さんと、ただ呆然と、立ち尽くしていた。
なんて、己は矮小で愚かな存在だろう。と思いながら。
見渡す限りの、瓦礫と破壊の跡。
なぜ、僕たち兄弟は、この未来を予測することができなかったのだろう。
本当に、僕たちはどこまで、ひどく馬鹿げていて、哀れなのだ…?
「「…」」
…僕を、そして、兄さんを。
あぁ、誰かが救ってよ。この地獄から助けてくれることを…。心から願って。
============
田舎町で小さな工場を営む兄弟にとって、「連邦の兵器開発主任へ」
という依頼は抗うことの出来ない魅力を持っていた。ただ、無邪気に速度や馬力を競い合い、
自ら手がけた機械たちの性能争いに夢中になっていたあの日。設計するものが兵器へと変化しても、
あの日と何ら変わることはないと思っていた。それが効果的に人の命を奪うためだけのものでしかないことに
気付こうともせずに、この手で数々の兵器達を送り出してきた。
その結果がこれだ。
========
「どうですかな?ブライアンさんとその弟御さん」
連邦の使者を名乗る男が、僕達兄弟に話しかけている。
「ええ。それで?」
「もう一度言いますが、是非とも、『連邦兵器開発主任』に」
この喜びを、誰にいえばいいのだろう。
僕達兄弟は、ただ好き勝手に、飛行機と車を作り続けた。だが、それだけなのに、本当に幸運にも千載一遇のチャンスが、目の前に転がり込んできたのだ。
「兄さん、ここは…」
「そうだな、二つ返事でOKだ。はい、やります。と。」
「そうですか。では…。この契約書にサインして、あなた方の履歴書を…。」
ねぇ…?…それで、幸せ?名声は天の刑罰なのに…?
=========
今目の前にあるのは厳しい現実。ひたすら逃げてきた現実が目の前に横たわっている。
しかし、もう逃げはしない。自ら生み出した兵器を、その手で葬りさる。その行為に正義はないと知りながらも、
エンジンの回転と共に高まる鼓動を抑えることが出来ない。いいだろう。自身の責任を果たすのに、大義はいらない。
ただ、今は出撃の時を待とう。今までの自分がしてきたことのために。そして、これからの自分が歩いて行けるように。
===================================
「僕たち、逃げなきゃよかった。ここまで、逃げ続けなきゃよかったのにね。兄さん…」
「ああ…。そうだ…」
僕達の製造した兵器に殺された、名も無き多くの人たち…。
どんなに苦しかったのだろう…?
それに、どんなに痛かったのだろう…。
目の前で人々が死んでいくのを見て、なにを思って死んでいったのだろう…。
その兵器を楽しみ、喜びながら、設計・製造をして、至極平和に生きていた、…その多くの。
罪無き民にそれらを味あわせた僕達は…。
・・・ただ、今は出撃の時を待とう。
今までの自分がしてきたカルマ(業)を、購う為に。
そして、これからの僕たちが歩いて行けるように…。
*
連邦国家に、全く勝ち目のないようにみえる謀反を仕掛ける、という、
ケツイを固めた僕達兄弟は、ガレッガシリーズの納められている、工場に併設された倉庫のシャッターを完全にあけ、出撃の準備を整える。
倉庫に眠る四機の高性能戦闘爆撃機。
それらは開発コード「G」、現ガレッガシリーズ。
僕達が己の自ら自負する、兵器としての、最高にして最後の作品。
G-1010 戦闘攻撃機「シルバーソード」
派生機「キャノンボール」「マサムネ」「シャッタースター」総計四種
G-130 陸上戦闘迎撃機「グラスホッパー」
派生機「レインフォーサー」「DGRオクトーバー」「ダイビングフォックス」総計四種
G-1026 軽艦上戦闘機「フライングバロン」
派生機「ストーミーオーメン」「レッドインパルス」「ブラックツエッペリン」総計四種
G-913 重艦上雷撃機 「ワイルドスネイル」
派生機「アイアンマッケレル」「ロストチャンピオン」「ゴールデンバット」総計四種
僕達兄弟は今までため込んだ、ありったけの石油を燃料に、僕は一号機シルバーソード、弟は四号機派生種ゴールデンバットに乗る。ちなみに、弟の乗るゴールデンバットは、僕達の最高傑作筆頭として、制作したことを誇りに思っている。…これが連邦の手に渡らなくて、本当によかった。
そう思いながら、防寒着もメットとゴーグルも、ちゃんと装着して、この謀反に望む。
僕は鼓動を、もう抑えられない。それは弟も同じだろう。
決して義憤や大義由来ではない、「僕達がやらなければ、誰がやるのだ?」という感情が高まる。
…そう、この時を。僕達は、待っていたんだ。
シルバーソードとゴールデンバットが、そのプロペラと機体が、パイロットである僕達兄弟を乗せて、ゆっくりと動き出す。そして、その鉄の塊ーー機械でできた重々しい体を空へと投げ出す。
さぁ、飛ぼう。あの鉛色の空(Fly to the leaden sky)を。
連邦への謀反(Subversive Awaness)を自覚して、ついでに、辺境生まれの精神(Marginal Conciouness)を持って。
==========
ウェイン兄弟は大陸西にイチする半島南端の田舎町で生まれた。(※原文ママ)
父の影響もあり幼い頃から機械いじりに親しみ、
成人してからも父の残した小さな自動車工場を細々と経営する傍らで、
数々のオリジナル車両や航空機を生み出していった。そしていつしかその噂は連邦政府にまで届くようになる。
==========
それは、まだ僕が幼かった頃。
「ジェイ。またいじめられたのか・・・」
「うん、オレオのくせに!って」
兄弟の故郷は、有色人種を差別し、低カーストに置くという悪習・・・、そして、その遙か前に、罪なきユダヤ人やイスラム教徒を追い出した、という不寛容で排他的な歴史を持つ国の、一地方だった。もちろん、弟は肌が褐色だからすぐにわかる。しかし、なぜか、その兄は、本当に父母ともに同じで、その差別された弟と実の兄弟であり・・・、が、しかし、白人ベースの外見をした兄はいじめられることはなかった。
・・・なぜであろう?
「なんで兄ちゃんはいじめられないの・・・?」
「たぶん、肌が白いからさ。おまけに眼も青で、髪も銀だし・・・」
「ただそれだけなの・・・?僕だって、兄ちゃんと同じ、青で銀色なのに・・・」
「そうさ。だって、君の同級生に『僕達は実の兄弟だ』っていっても『いくら兄弟でも、どうせ義理だろ!オメー!うそついてんだろっ!』っていわれたじゃないか」
「まぁ、たしかにそれは覚えているけど・・・」
「嗚呼、やだなぁ・・・。しかも、母さんも親父も完全無視だもんなぁ・・・。『あきらめなさい、それがイヤなら、やったらやり返せ』だもんなぁ・・・。・・・あ、そうだ。だったら、スパナを武器に・・・。こう・・・、ガツンッ!と・・・」
「兄ちゃん!ナイスアイディアっ!」
そういって、父親の運営する自動車工場から、スパナを取りに行く弟。
「(でも、それで全解決するわけが、ないよね・・・)」
兄は、いつも弟以外の欧米地域以外が起源の人のことも考えて、「早く、教義と法律レベルでそういうのを撤廃してくれないかな」と思う。
*
さて、青春から成人したての頃にかけて、ウェイン兄弟が父親から受け継いだ自動車工場で、オリジナルの車両や飛行機を作り出していたこと、それは地元では、実によく知られていた。
それに加えて、よく兄弟は、クライアントのリクエストに応じて、車両や飛行機の改造を副業にしていたことも、かなり影響していたかもしれない。
しかし、携帯端末、テレビやネットが影も形も無く、ラジオや初期型の電話はあるが、それほど高性能で無い時代、その「名声」が、幸か不幸か、遠く離れているはずの連邦国家の耳に届いたことは、奇跡に近いことだろう。
筆者自身も、なぜその運びになったかが知りたいものだ。
しかし、神亀はくだらない理由で屠られ、卜占に使われるのが運命ーー定めである。兄弟もそうならないように、二人の父マシューもどこからか、そう願うべきであろう。
しかし、東洋諸国の真人と違い、ヨーロッパには名声や出世を喜ぶだけの人間が多く、そのような認識は朝の露ほども無いのが現実である。
本当に、「道と呼ばれる宇宙の真理」に従っていきたいと思う人は、造化者と戯れ、天と徒(ともがら)になり、常に泥の中で生きる亀でありたいと願うモノだ。
しかし、西洋人はかならずしもそうではない。いや、そうでないことが圧倒的に多い。彼らは真人とは、実に真逆に考える。
それが、産業革命以降の、機械文明が生み出す悲劇と多くの四苦八苦を、後世の子孫たちが味わうこととなるのだ…。当時の人間が、七代先まで考えれば、このような状況と環境にはならないというのに。
「なにをいっているの…。科学は人を幸せにするものなのに…?」
==========
兄弟の斬新な発想と大胆な設計は、
連邦に「開発主任」という異例の待遇で迎え入れられる事になり、
2人は豊富な資金の元その開発スピードにも磨きがかかった。そして、彼らの生み出す数々の新兵器は連邦に「領土拡大」の野望を抱かせるに十分なものであり、
時をおかずその野望は実行に移されることとなった。
=================
春秋戦国時代の中国に、群雄割拠の状況がよく酷似した近代ヨーロッパ。
その一地方には、周辺国家に悟られぬように、連邦が極秘に作ったであろう、渓谷の狭間に作られた工場がある。
そこで、多種多様のあらゆる兵器を作っているところを見ると、どうやら、ウェイン兄弟もそこで働いていたらしい。
その証拠に、彼ら兄弟が書いた設計図やら部品注文書がとある一室に散らばってる。
ついでに、扉をみると、ドイツ語で「開発部」とかかれていた。
「兄さん」
「なんだ」
「そのメモ…。それは、…今度制作する、Gシリーズの」
弟は、紙を拾って未完成の設計図と、併記されたメモをみる。
「…捨てろ。捨てるんだ」
「どうして?」
「僕達は…。もう、兵器を作っては…」
「なにをいっているの?兄さん?…兵器を作るのは僕達の仕事じゃないの?」
「ジェイ…。いいか。僕達はもう、兵器を作ってはいけないんだ。」
「…なんでなの?」
「…それは。その理由は。僕は、作った飛行機が飛び立って、遠くにある街を爆撃するところをみてしまったから。もう作る気がしない。」
「じゃあ、それじゃあ!連邦で働けなくなる!僕たちは、ちゃんと働き口があって、実際に連邦でもそこそこ上の方に入るほど、豊かに暮らしているのに!」
「でもな、ジェイ。僕達の豊かさの為に人の命--数多くのーーーそんな大切なモノが犠牲になるなんて、人として間違ってはいないか?」
「た、確かにそうだけど…。だけど、僕たち、さんざん連邦にお世話になっといて、それはないよ。それって恩知らずの行為じゃ…」
「ジェイ!!」
「ひっ!!」
「君だってもう、人殺しになるのはいやだろっ!?」
「だ、だけど…っ!でも、連邦が大陸史上最強の高性能爆撃戦闘機を造れ、って!で、それを造らないと、僕達のどちらかを、ここよりもっと僻地の工場に左遷するって…!」
「…!…わかった。Gシリーズは、僕達が造る兵器群…、その最後の作品にしよう…」
-----連邦のオーダーは非常に、僕達にはハードルが高かった。
僕達は、つとめている連邦の人間から「鬼才・天才」などと賞賛されて久しいが、それでも十分に高い。
…一応、満たさなければならないオーダーを列挙すると、
「・全方向に動けるレシプロ戦闘機
・ここぞというときに使えるなにかしらの特殊武装
・全方位カバーする威力のある手痛い射撃装置」
これらをすべて満たさなければならない。
「兄さん、こんなの無理だよ」
「やってみなくちゃわからないだろ?ほら、『なせばなる』だ」
*
僕達はまず・全方向に動けるレシプロ戦闘機、というオーダーから応えることにした。
と、いいたいところだけど、僕達はこの技術は明かしたくない(21世紀の君たちには教えたくない極秘中の極秘)。
なので、君たちには「おしえなぁいッ!」と。
(※注:作者自体、ガレッガのみならず、他の作品でも、
「なぜレシプロ機系戦闘機が八方向に動けるか?」という仕組みが全くわからないので、こういうごまかし方。
i どういう仕組みでレシプロ機が八方向に動けるのか、ウェイン兄弟でも誰でもいいから、この作者にガチで教えてくださいっ!)
次は、・ここぞというときに使えるなにかしらの特殊武装
か・・・。
これはなぁ・・・。コストがいくら掛かっても、回数制限があっても、超火力の方がいいのか?それとも、何回も使えるように、少しそれ相応に威力を下げてでも、そういう仕様にした方がいいのか?
・・・そこのところを詳しく書いておくれよ。
そして、悩み抜いた末、あえて、僕達は一発投下して大爆発を起こすタイプを採用するのをやめた。
戦車や飛行機がまだなかった頃からたいそう盛んに使われていた、とても初期的な爆弾(ボム)では、とても連邦が喜んではくれないと、主に僕が判断した。
さっき、「コストがいくら掛かっても、回数制限があっても、超火力の方がいいのか?それとも、何回も使えるように、少しそれ相応に威力を下げてでも、そういう仕様にした方がいいのか?」と書いたが、
僕は、その二つある仕様を重ねて、「ボムチップ」という弾丸の個数によって、威力や範囲が変わるシステムへと組み上げた。
少なければ、範囲も小さいし、威力も弱い。
だが、ボムチップを集めて集めて、個数が大きい一つの枠まで、何回もたまれば、最大威力のボムがその回数分使える。そして、同時にその大きい枠一個分のボムを最大五発打てるように格納庫を確保した。
・・・これで完璧。
で、最後。・全方位カバーする威力のある手痛い射撃装置。だね。
これもなやんだ。だって、このオーダー、あまりにもアバウトすぎるんだ・・・。
・・・おいおい、もっと、具体的にオーダーしてくれよ。「・・・どうつくればいいんだ?」弟も困ってんじゃないか。
それで、仕方なく、「フォース」なるものを試作してみた。だめだ、いくら優秀な科学者、発明家的な技術者といえども、僕達には手に余る。特に、この時代に、宙に浮くくらい軽く、何も不純物のない透過ガラスを作るのは不可能だ。
あと、「イオ」「ボイジャー」「ガンナー」「子機」「シキガミ」「ハイパーモード」「使い魔」「モスキート」「リフレクトフォース」「ロックオンシステム」「魔法少女(マリ○ン)の下僕」とかも考案した。さっき書いたのは、氷山の一角で、兄弟で考え出したアイディアは、全部で108個くらいあった。
だけど、全部。・・・結局、だめだった。
・・・技術が追いつかない。
そのような中、僕が設計図という原稿が真っ白で、仕様に悩み抜いているうちに、弟が「オプションシステム」という名で、開発を始めた。(ついでにいうと、その「オプションとなる武器」の正式名称は「G-SHOT」にする予定だそうだ)
それで、弟は僕より優秀なのか、彼自身が書いたメモと設計図を参考にして、段取りよくG-SHOTを制作してしまった。
しかも、弟はシステムの一部として、四つの「フォーメーション」まで仕様として入れていた。
それらの名は、ノーマル・バック・フロント・トレース・ラウンド。あとは、隠しフォーメーションなるものを設定したらしいが、その具体的な内容と発動条件は、僕、兄貴にも連邦にも教えないらしい。
・・・そうか。ちょっと、弟のいない間に、機械いじりでもしておこうかなぁ。・・・さてとっ!!
*
我々は元来、軍の中枢に、常に無表情で座っていなければならないのだが、なぜか今日だけは、そういう空気ではなかった。
「四機の高性能戦闘爆撃機、オーダー通り完成しました。いま、そちらに納品しにいきます」
遠くにいる兄弟から、我ら連邦にそのような電報が届いた。
「そうかそうか。ウェイン兄弟よ。我が連邦のために、そこまでしてくれたのだな」
我が軍の中枢一丸で考えて、例の兄弟に与えたオーダーから、三ヶ月の月日が経った。
我が国の要求したオーダーどおり、あの才気煥発な機械技師兄弟が、高性能戦闘爆撃機四機のプロトタイプを開発・制作し、それを連邦の資金力と技術力をもって量産の暁には、我が国は大陸の、東洋に史上初めて統一国家を作った、始皇帝・政が建国せし、同じく春秋戦国時代を生き抜いた、偉大なる六雄すら越える大覇者・秦となろう。
・・・フフッ。やはり、天の利より地の利、それより人の和・・・。そして、優秀な人材。つまり、奇貨置くべし・・・。
小佐が中国古典の言葉を引用している、そのとき、
ガタッ!!と、大きすぎるドアを粗末に扱う音がした。
「大変ですっ!小佐っ!!!」
「なんだ、大尉」
「ウェイン兄弟が、連邦から完全に姿を消しました!!あと中枢工場で働いていた従業員二名もっ!!」
「なにっ!!大尉よっ!!我が連邦における、兵器開発主任をつとめるウェイン兄弟が逃げただとっ!!」
「いえ、小佐。正しくは、『亡命』でしょう」
※バトルガレッガ二次創作
---悪夢のような夜が開けた。しかし、朝陽に照らされ浮かび上がる光景は、未だ悪夢が過ぎ去った訳では無いことを告げていた。
昨日までは人々が集い、恋人たちが愛を語り合ったその場所には瓦礫の山が広がり、
そこかしこで無数のうめき声と赤ん坊の力ない泣き声が聞こえるのみ。
そして、やがてはそれさえも朝の光に溶け込み、消えていった。
まさかこんなことになろうとは。
=================
ーーー僕は兄さんと、ただ呆然と、立ち尽くしていた。
なんて、己は矮小で愚かな存在だろう。と思いながら。
見渡す限りの、瓦礫と破壊の跡。
なぜ、僕たち兄弟は、この未来を予測することができなかったのだろう。
本当に、僕たちはどこまで、ひどく馬鹿げていて、哀れなのだ…?
「「…」」
…僕を、そして、兄さんを。
あぁ、誰かが救ってよ。この地獄から助けてくれることを…。心から願って。
============
田舎町で小さな工場を営む兄弟にとって、「連邦の兵器開発主任へ」
という依頼は抗うことの出来ない魅力を持っていた。ただ、無邪気に速度や馬力を競い合い、
自ら手がけた機械たちの性能争いに夢中になっていたあの日。設計するものが兵器へと変化しても、
あの日と何ら変わることはないと思っていた。それが効果的に人の命を奪うためだけのものでしかないことに
気付こうともせずに、この手で数々の兵器達を送り出してきた。
その結果がこれだ。
========
「どうですかな?ブライアンさんとその弟御さん」
連邦の使者を名乗る男が、僕達兄弟に話しかけている。
「ええ。それで?」
「もう一度言いますが、是非とも、『連邦兵器開発主任』に」
この喜びを、誰にいえばいいのだろう。
僕達兄弟は、ただ好き勝手に、飛行機と車を作り続けた。だが、それだけなのに、本当に幸運にも千載一遇のチャンスが、目の前に転がり込んできたのだ。
「兄さん、ここは…」
「そうだな、二つ返事でOKだ。はい、やります。と。」
「そうですか。では…。この契約書にサインして、あなた方の履歴書を…。」
ねぇ…?…それで、幸せ?名声は天の刑罰なのに…?
=========
今目の前にあるのは厳しい現実。ひたすら逃げてきた現実が目の前に横たわっている。
しかし、もう逃げはしない。自ら生み出した兵器を、その手で葬りさる。その行為に正義はないと知りながらも、
エンジンの回転と共に高まる鼓動を抑えることが出来ない。いいだろう。自身の責任を果たすのに、大義はいらない。
ただ、今は出撃の時を待とう。今までの自分がしてきたことのために。そして、これからの自分が歩いて行けるように。
===================================
「僕たち、逃げなきゃよかった。ここまで、逃げ続けなきゃよかったのにね。兄さん…」
「ああ…。そうだ…」
僕達の製造した兵器に殺された、名も無き多くの人たち…。
どんなに苦しかったのだろう…?
それに、どんなに痛かったのだろう…。
目の前で人々が死んでいくのを見て、なにを思って死んでいったのだろう…。
その兵器を楽しみ、喜びながら、設計・製造をして、至極平和に生きていた、…その多くの。
罪無き民にそれらを味あわせた僕達は…。
・・・ただ、今は出撃の時を待とう。
今までの自分がしてきたカルマ(業)を、購う為に。
そして、これからの僕たちが歩いて行けるように…。
*
連邦国家に、全く勝ち目のないようにみえる謀反を仕掛ける、という、
ケツイを固めた僕達兄弟は、ガレッガシリーズの納められている、工場に併設された倉庫のシャッターを完全にあけ、出撃の準備を整える。
倉庫に眠る四機の高性能戦闘爆撃機。
それらは開発コード「G」、現ガレッガシリーズ。
僕達が己の自ら自負する、兵器としての、最高にして最後の作品。
G-1010 戦闘攻撃機「シルバーソード」
派生機「キャノンボール」「マサムネ」「シャッタースター」総計四種
G-130 陸上戦闘迎撃機「グラスホッパー」
派生機「レインフォーサー」「DGRオクトーバー」「ダイビングフォックス」総計四種
G-1026 軽艦上戦闘機「フライングバロン」
派生機「ストーミーオーメン」「レッドインパルス」「ブラックツエッペリン」総計四種
G-913 重艦上雷撃機 「ワイルドスネイル」
派生機「アイアンマッケレル」「ロストチャンピオン」「ゴールデンバット」総計四種
僕達兄弟は今までため込んだ、ありったけの石油を燃料に、僕は一号機シルバーソード、弟は四号機派生種ゴールデンバットに乗る。ちなみに、弟の乗るゴールデンバットは、僕達の最高傑作筆頭として、制作したことを誇りに思っている。…これが連邦の手に渡らなくて、本当によかった。
そう思いながら、防寒着もメットとゴーグルも、ちゃんと装着して、この謀反に望む。
僕は鼓動を、もう抑えられない。それは弟も同じだろう。
決して義憤や大義由来ではない、「僕達がやらなければ、誰がやるのだ?」という感情が高まる。
…そう、この時を。僕達は、待っていたんだ。
シルバーソードとゴールデンバットが、そのプロペラと機体が、パイロットである僕達兄弟を乗せて、ゆっくりと動き出す。そして、その鉄の塊ーー機械でできた重々しい体を空へと投げ出す。
さぁ、飛ぼう。あの鉛色の空(Fly to the leaden sky)を。
連邦への謀反(Subversive Awaness)を自覚して、ついでに、辺境生まれの精神(Marginal Conciouness)を持って。
==========
ウェイン兄弟は大陸西にイチする半島南端の田舎町で生まれた。(※原文ママ)
父の影響もあり幼い頃から機械いじりに親しみ、
成人してからも父の残した小さな自動車工場を細々と経営する傍らで、
数々のオリジナル車両や航空機を生み出していった。そしていつしかその噂は連邦政府にまで届くようになる。
==========
それは、まだ僕が幼かった頃。
「ジェイ。またいじめられたのか・・・」
「うん、オレオのくせに!って」
兄弟の故郷は、有色人種を差別し、低カーストに置くという悪習・・・、そして、その遙か前に、罪なきユダヤ人やイスラム教徒を追い出した、という不寛容で排他的な歴史を持つ国の、一地方だった。もちろん、弟は肌が褐色だからすぐにわかる。しかし、なぜか、その兄は、本当に父母ともに同じで、その差別された弟と実の兄弟であり・・・、が、しかし、白人ベースの外見をした兄はいじめられることはなかった。
・・・なぜであろう?
「なんで兄ちゃんはいじめられないの・・・?」
「たぶん、肌が白いからさ。おまけに眼も青で、髪も銀だし・・・」
「ただそれだけなの・・・?僕だって、兄ちゃんと同じ、青で銀色なのに・・・」
「そうさ。だって、君の同級生に『僕達は実の兄弟だ』っていっても『いくら兄弟でも、どうせ義理だろ!オメー!うそついてんだろっ!』っていわれたじゃないか」
「まぁ、たしかにそれは覚えているけど・・・」
「嗚呼、やだなぁ・・・。しかも、母さんも親父も完全無視だもんなぁ・・・。『あきらめなさい、それがイヤなら、やったらやり返せ』だもんなぁ・・・。・・・あ、そうだ。だったら、スパナを武器に・・・。こう・・・、ガツンッ!と・・・」
「兄ちゃん!ナイスアイディアっ!」
そういって、父親の運営する自動車工場から、スパナを取りに行く弟。
「(でも、それで全解決するわけが、ないよね・・・)」
兄は、いつも弟以外の欧米地域以外が起源の人のことも考えて、「早く、教義と法律レベルでそういうのを撤廃してくれないかな」と思う。
*
さて、青春から成人したての頃にかけて、ウェイン兄弟が父親から受け継いだ自動車工場で、オリジナルの車両や飛行機を作り出していたこと、それは地元では、実によく知られていた。
それに加えて、よく兄弟は、クライアントのリクエストに応じて、車両や飛行機の改造を副業にしていたことも、かなり影響していたかもしれない。
しかし、携帯端末、テレビやネットが影も形も無く、ラジオや初期型の電話はあるが、それほど高性能で無い時代、その「名声」が、幸か不幸か、遠く離れているはずの連邦国家の耳に届いたことは、奇跡に近いことだろう。
筆者自身も、なぜその運びになったかが知りたいものだ。
しかし、神亀はくだらない理由で屠られ、卜占に使われるのが運命ーー定めである。兄弟もそうならないように、二人の父マシューもどこからか、そう願うべきであろう。
しかし、東洋諸国の真人と違い、ヨーロッパには名声や出世を喜ぶだけの人間が多く、そのような認識は朝の露ほども無いのが現実である。
本当に、「道と呼ばれる宇宙の真理」に従っていきたいと思う人は、造化者と戯れ、天と徒(ともがら)になり、常に泥の中で生きる亀でありたいと願うモノだ。
しかし、西洋人はかならずしもそうではない。いや、そうでないことが圧倒的に多い。彼らは真人とは、実に真逆に考える。
それが、産業革命以降の、機械文明が生み出す悲劇と多くの四苦八苦を、後世の子孫たちが味わうこととなるのだ…。当時の人間が、七代先まで考えれば、このような状況と環境にはならないというのに。
「なにをいっているの…。科学は人を幸せにするものなのに…?」
==========
兄弟の斬新な発想と大胆な設計は、
連邦に「開発主任」という異例の待遇で迎え入れられる事になり、
2人は豊富な資金の元その開発スピードにも磨きがかかった。そして、彼らの生み出す数々の新兵器は連邦に「領土拡大」の野望を抱かせるに十分なものであり、
時をおかずその野望は実行に移されることとなった。
=================
春秋戦国時代の中国に、群雄割拠の状況がよく酷似した近代ヨーロッパ。
その一地方には、周辺国家に悟られぬように、連邦が極秘に作ったであろう、渓谷の狭間に作られた工場がある。
そこで、多種多様のあらゆる兵器を作っているところを見ると、どうやら、ウェイン兄弟もそこで働いていたらしい。
その証拠に、彼ら兄弟が書いた設計図やら部品注文書がとある一室に散らばってる。
ついでに、扉をみると、ドイツ語で「開発部」とかかれていた。
「兄さん」
「なんだ」
「そのメモ…。それは、…今度制作する、Gシリーズの」
弟は、紙を拾って未完成の設計図と、併記されたメモをみる。
「…捨てろ。捨てるんだ」
「どうして?」
「僕達は…。もう、兵器を作っては…」
「なにをいっているの?兄さん?…兵器を作るのは僕達の仕事じゃないの?」
「ジェイ…。いいか。僕達はもう、兵器を作ってはいけないんだ。」
「…なんでなの?」
「…それは。その理由は。僕は、作った飛行機が飛び立って、遠くにある街を爆撃するところをみてしまったから。もう作る気がしない。」
「じゃあ、それじゃあ!連邦で働けなくなる!僕たちは、ちゃんと働き口があって、実際に連邦でもそこそこ上の方に入るほど、豊かに暮らしているのに!」
「でもな、ジェイ。僕達の豊かさの為に人の命--数多くのーーーそんな大切なモノが犠牲になるなんて、人として間違ってはいないか?」
「た、確かにそうだけど…。だけど、僕たち、さんざん連邦にお世話になっといて、それはないよ。それって恩知らずの行為じゃ…」
「ジェイ!!」
「ひっ!!」
「君だってもう、人殺しになるのはいやだろっ!?」
「だ、だけど…っ!でも、連邦が大陸史上最強の高性能爆撃戦闘機を造れ、って!で、それを造らないと、僕達のどちらかを、ここよりもっと僻地の工場に左遷するって…!」
「…!…わかった。Gシリーズは、僕達が造る兵器群…、その最後の作品にしよう…」
-----連邦のオーダーは非常に、僕達にはハードルが高かった。
僕達は、つとめている連邦の人間から「鬼才・天才」などと賞賛されて久しいが、それでも十分に高い。
…一応、満たさなければならないオーダーを列挙すると、
「・全方向に動けるレシプロ戦闘機
・ここぞというときに使えるなにかしらの特殊武装
・全方位カバーする威力のある手痛い射撃装置」
これらをすべて満たさなければならない。
「兄さん、こんなの無理だよ」
「やってみなくちゃわからないだろ?ほら、『なせばなる』だ」
*
僕達はまず・全方向に動けるレシプロ戦闘機、というオーダーから応えることにした。
と、いいたいところだけど、僕達はこの技術は明かしたくない(21世紀の君たちには教えたくない極秘中の極秘)。
なので、君たちには「おしえなぁいッ!」と。
(※注:作者自体、ガレッガのみならず、他の作品でも、
「なぜレシプロ機系戦闘機が八方向に動けるか?」という仕組みが全くわからないので、こういうごまかし方。
i どういう仕組みでレシプロ機が八方向に動けるのか、ウェイン兄弟でも誰でもいいから、この作者にガチで教えてくださいっ!)
次は、・ここぞというときに使えるなにかしらの特殊武装
か・・・。
これはなぁ・・・。コストがいくら掛かっても、回数制限があっても、超火力の方がいいのか?それとも、何回も使えるように、少しそれ相応に威力を下げてでも、そういう仕様にした方がいいのか?
・・・そこのところを詳しく書いておくれよ。
そして、悩み抜いた末、あえて、僕達は一発投下して大爆発を起こすタイプを採用するのをやめた。
戦車や飛行機がまだなかった頃からたいそう盛んに使われていた、とても初期的な爆弾(ボム)では、とても連邦が喜んではくれないと、主に僕が判断した。
さっき、「コストがいくら掛かっても、回数制限があっても、超火力の方がいいのか?それとも、何回も使えるように、少しそれ相応に威力を下げてでも、そういう仕様にした方がいいのか?」と書いたが、
僕は、その二つある仕様を重ねて、「ボムチップ」という弾丸の個数によって、威力や範囲が変わるシステムへと組み上げた。
少なければ、範囲も小さいし、威力も弱い。
だが、ボムチップを集めて集めて、個数が大きい一つの枠まで、何回もたまれば、最大威力のボムがその回数分使える。そして、同時にその大きい枠一個分のボムを最大五発打てるように格納庫を確保した。
・・・これで完璧。
で、最後。・全方位カバーする威力のある手痛い射撃装置。だね。
これもなやんだ。だって、このオーダー、あまりにもアバウトすぎるんだ・・・。
・・・おいおい、もっと、具体的にオーダーしてくれよ。「・・・どうつくればいいんだ?」弟も困ってんじゃないか。
それで、仕方なく、「フォース」なるものを試作してみた。だめだ、いくら優秀な科学者、発明家的な技術者といえども、僕達には手に余る。特に、この時代に、宙に浮くくらい軽く、何も不純物のない透過ガラスを作るのは不可能だ。
あと、「イオ」「ボイジャー」「ガンナー」「子機」「シキガミ」「ハイパーモード」「使い魔」「モスキート」「リフレクトフォース」「ロックオンシステム」「魔法少女(マリ○ン)の下僕」とかも考案した。さっき書いたのは、氷山の一角で、兄弟で考え出したアイディアは、全部で108個くらいあった。
だけど、全部。・・・結局、だめだった。
・・・技術が追いつかない。
そのような中、僕が設計図という原稿が真っ白で、仕様に悩み抜いているうちに、弟が「オプションシステム」という名で、開発を始めた。(ついでにいうと、その「オプションとなる武器」の正式名称は「G-SHOT」にする予定だそうだ)
それで、弟は僕より優秀なのか、彼自身が書いたメモと設計図を参考にして、段取りよくG-SHOTを制作してしまった。
しかも、弟はシステムの一部として、四つの「フォーメーション」まで仕様として入れていた。
それらの名は、ノーマル・バック・フロント・トレース・ラウンド。あとは、隠しフォーメーションなるものを設定したらしいが、その具体的な内容と発動条件は、僕、兄貴にも連邦にも教えないらしい。
・・・そうか。ちょっと、弟のいない間に、機械いじりでもしておこうかなぁ。・・・さてとっ!!
*
我々は元来、軍の中枢に、常に無表情で座っていなければならないのだが、なぜか今日だけは、そういう空気ではなかった。
「四機の高性能戦闘爆撃機、オーダー通り完成しました。いま、そちらに納品しにいきます」
遠くにいる兄弟から、我ら連邦にそのような電報が届いた。
「そうかそうか。ウェイン兄弟よ。我が連邦のために、そこまでしてくれたのだな」
我が軍の中枢一丸で考えて、例の兄弟に与えたオーダーから、三ヶ月の月日が経った。
我が国の要求したオーダーどおり、あの才気煥発な機械技師兄弟が、高性能戦闘爆撃機四機のプロトタイプを開発・制作し、それを連邦の資金力と技術力をもって量産の暁には、我が国は大陸の、東洋に史上初めて統一国家を作った、始皇帝・政が建国せし、同じく春秋戦国時代を生き抜いた、偉大なる六雄すら越える大覇者・秦となろう。
・・・フフッ。やはり、天の利より地の利、それより人の和・・・。そして、優秀な人材。つまり、奇貨置くべし・・・。
小佐が中国古典の言葉を引用している、そのとき、
ガタッ!!と、大きすぎるドアを粗末に扱う音がした。
「大変ですっ!小佐っ!!!」
「なんだ、大尉」
「ウェイン兄弟が、連邦から完全に姿を消しました!!あと中枢工場で働いていた従業員二名もっ!!」
「なにっ!!大尉よっ!!我が連邦における、兵器開発主任をつとめるウェイン兄弟が逃げただとっ!!」
「いえ、小佐。正しくは、『亡命』でしょう」
=================
遅ればせながら自分たちのしでかしてきたことに気づいた2人は、試作中の4機の高性能戦闘爆撃機を持ち出した。我が身と共にそれを隠すことにより、
連邦の進撃を止めようとしたのである。しかし、一旦始まった戦争がそんなことで終わる訳もなく、
とうとう戦禍は彼らが身を隠していた町にまで伸び、2人は自らの甘さと戦争の現実を目の当たりにする。
================
あれから、三ヶ月。
連邦から、僕達の最高傑作である、4機の高性能すぎる戦闘爆撃機を、連邦で同じく整備士や機械技師などをしていた二人の友人に協力してもらって、僕達はその4機の作品と共に、田舎に「亡命」した。
たぶん、彼ら二人の進言がなければ、僕達はずっと連邦に荷担していただろう。僕達の性格は、そこまで陽極性がなく、そこまでの勇気をだせなかったからだ。それに加えて、何度か試運転や試験をして、本気でガレッガシリーズが、非常に連邦に使わせては、マズイ兵器ということが明白にわかった。
ガレッガシリーズ四機を連邦に差し出して、兵器として運用させるのを大幅に変更し、結局、僕達はそれを使わせないために、あえて、今までの仕事を捨ててまで、『亡命』をしたのだ。そうすれば、切り札---最有力の駒(チェスでいうクイーン、東洋の将棋でいう飛車)がないのに、戦争を起こそうとは思わないだろう。
つまり、もう人は死なない。僕達は、安心して枕を高くして眠ることができる。
さぁ、ジェイ。何の心配もなく、昔みたいに、一緒に仲むつまじく、また笑いあって暮らすことができるね・・・。
*
さて、その住み着く亡命先。連邦は機械化、人工化、工業・宅地開発が非常に(とはいっても、まだ初期段階だったけど)激しかったが、僕達の逃げ延びた町とその周辺は、ほんとうに昔ながらの農業や営み、ローマ帝国から続く古代からの森と自然が完全に生き残っていた土地だった。
だが、故郷とはかなり違う場所だ。海もないし、食生活も習慣やしきたりも違う。
しかも、故郷よりかなり人種差別が激しい場所(読者の皆さんに詳しく言うと、欧米には、21世紀の時代でもそういう地域は五万とある)
で、黒人の血が入っている弟がどんな扱いを受けるか、というのも心配だった。・・・まぁ、すんでみないとわからないさ。
*
将来、連邦が詳しく内部事情を知る僕たちを見つけて、それから、刺客や暗殺者を送ってこないように、亡命先に住み初めて、半年たった頃、ガレッガシリーズの本格的な改造と僕たち自身の武装(ある程度だが)を始めた。
---特に、四号機・ワイルドスネイルは、兄さんが僕のために改造してくれた。この雷撃機に、標準装備されることになる貫通弾は、僕たち兄弟が開発した、連邦にも秘匿している門外不出の技術が使われている。
きっと、この技術を連邦に教えていたら、この大陸は中国の秦王朝によく似た統一国家を、偉大なるローマ帝国の次に出現させていただろう。
でも、地方分権的に「分割して統治すること」が、政治とそこに住む人民に、もっとも有益であることを、兄さんから僕は教わった。
とにかく、この貫通弾を造る技術はそれほど強力で役に立つのだ。
*
「なんだか町が騒がしいな」
深夜、家でネズミとあそんでいると、街の方から不自然な爆音や騒音が聞こえた。
「兄さん、なんの音だろう?」
「・・・!いや、これはっ!!」
空襲の音だ!そういって兄さんは外へ飛び出していった。
「あっ!まってよ!」
完全な夜の闇に、兄さんが飛び出していく。
そういう兄さんをみて、僕は、「大事な家族を放っておきたくない!」という気持ちから、兄さんの後を追う。
僕たちの住まいとガレッガシリーズとジャンク機械がおいてある工場は、かなり街の遠くにある。
町の人が、僕たち兄弟を、ガレッガシリーズや連邦からきたことを理由に、よそ物扱いしたこともあるけど、同じく、悲しいことに僕が黒人の血を引いているのもある。
未だ白人以外を受け入れたことが滅多にない、封建的な地域だったのだ。
僕がそんな差別を受けても、兄さんは街の方へと走っていった。・・・なぜだろう?
街につくと、兄さんが街に近い丘の上で、空襲をみていた。不思議とガレッガシリーズで対抗する気は起きなかった。よく考えて、その前にできないことに気がついた。
石油というものは、連邦ではともかく、平和な田舎では、本当に貴重な品で、燃料を「無駄使い」するわけには、いかないのだ。
そう、いろいろと考えているうちに、兄さんに追いついた。
「どうして?僕も兄さんも、なんであんなに差別を受けていたのに・・・?なぜ、街に・・・」
「ジェイ、・・・それは。・・・それは、僕達に食料売ってくれたし、機械関係の仕事を頼んでくれたし、それに、井戸をかしてくれたから・・・。だから、その恩で・・・。どうかして、ガレッガシリーズで迎撃できれば、よかったのに・・・。でも、この地域では、石油は本当に稀少な・・・。」
「兄さん・・・」
「石油さえあれば・・・」
*
朝になり、陽がまた昇る。
あれほど長く激しく続いた、夜の空襲は完全に終わった。
その代わりに、街はただの焼け野原になってしまったけど・・・。
僕たちの詰めは本当に甘かった。
結局、前線を制し、敵の行動や攻撃をすべて封じ込めるような-----たった一機だけであの「飛将」のようにすさまじく強い-------最主力の戦闘爆撃機になるはずだった、そのガレッガシリーズがなくても、あの連邦は大陸統一の為に、僕たちが過去に制作した兵器群を利用して、覇道に沿い、戦争を始めたのだ。
僕たちが見るのは、ただ焼け野原だ。
嗚呼、僕は、なにも考えられず。・・・そう、ただ呆然と。
-----僕は兄さんと、ただ呆然と・・・。
================
時は産業革命から数十年が過ぎ去った頃。場所は「連邦」と呼ばれる軍事国家とその周辺。多くの工場が、
海や空を汚染していても、まだ大部分が美しい自然に覆われている。
====================
「…」動植物達は完全に沈黙している。
しかし、これは黄金に値する沈黙ではない。
たとえるなら、鉛か鉄。
それは完全なる、主張と声の圧殺だ。
私は、とあるアイヌ人の巫女みたいな霊力はない。だが、多少は自然の嘆きや悲鳴がわかる。私じゃなくても、地球上に生きる人間なら誰でも、もっている能力だろう。
しかし、大半を占める多くの人間は、その能力を知らず、駆使することもなく、ただなにも考えず平然と生きているのが、悲しい現実である。
「大いなる神秘が悲嘆している…」
====================
化石燃料を利用して動く内燃機関が生まれて20年ほどしか経たず、一般的なテクノロジーはまだまだ低い。
が、ウェイン兄弟をはじめとする才能と「連邦」の資金力の融合により、軍事技術は恐ろしく発達している。
====================
バカでかい工場がある。
そこは、大型の飛行機が1%の存在だとすると、99%もまだスペースが有り余るほど。
そして、その工場は、とある国でいうと穀倉地と酪農地を兼ねた地方のような、それによく似た広大なアメリカ平野のような場所に作られていたのであった。
ところで、そこでなにを作っていたか、というと。
「スレイヤー?」
「そうです。スレイヤーです」
「あの兄弟が設計したヤツか」
「そうです」
「で?何か?」
「重大な欠陥が見つかりまして」
「どこにあるんだ?それは?」
「エンジンシステム・・・」
彼、工場員がいうには、点検時に整備員が見つけたようだった。しかも、その整備員は、まだ栗色の髪をしたうら若い乙女らしい。余談だが、その娘、この工場では、太股がよく見える短パンで、異性の整備員を悩ませることで有名である。
その情報は、無駄話にしかすぎないが、まぁ、彼女が欠陥を見つけずに試運転しなくて、幸運でよかったということだ。
「エンジンは誰が設計したんだ?」
「例の兄弟です」
「はっ?なにかの間違いじゃないのか?」
「工場長には、真実をもうしました。それより、現場に行けばわかります。」
スレイヤーのエンジン部分をよくみると、部品が複雑すぎて、こんがらがるくらいゴチャゴチャ混乱するような組立方をしている。
現代のとある国でいう、某タイマーで有名な会社の機械製品のように。
工場で、誰よりも機械慣れした工場長も「よくこんなに詰め込んだな」とコメントするしかなかった。
「ほんとに、あの兄弟設計か・・・?」
「ええ、そうです」
「こんなに詰め込んだら、重くて飛べんだろ」
「ですよねー」
「じゃあ、儂等で調整するか。いわゆるスリム化だ」
こうして、工場の人間で勝手に調整して、試運転をしたら、そのスレイヤー、結構性能が上がって、兄弟設計の時より大幅に、機能・運動性ともに向上したらしい。
つまり、この時代にはウェイン兄弟に匹敵するほどの、技術と職人魂を持った人間も、確かにいるということだ。
====================
その大陸の約半分をしめる15の州からなる「連邦国家」。
産業革命以前の時代より、領土を巡って多くの戦いがあったが約20年ほど前に一つの連邦国家が形成され、
現在に至るまで大きな戦争はなかった(小競り合い程度の物は絶えることはなかったが)。
しかしミリタリーバランスの崩壊により大陸全土の占領を目論見、宣戦布告。他国に対しての圧倒的なアドバンテージを保っている。
その軍事的中枢は要塞化されており、いかなる者の侵入も許さない。
==============
「…失礼します」
将校の部屋に、とある大尉が入ってくる。
「何か用か」
「ええ。連邦内の公害状況報告に」
「そうか。では資料を」
しかし、資料は莫大な情報量を擁していた。
(・・・ふざけるな)
将校はそう、顔に出さずメンチを切ったが、どちらがふざけているのかは、筆者はあえて言わない。
それに、一刻も早く、富国強兵を成し遂げたい連邦の官僚である「お偉いさん」に、そのすべてを読破する暇は無い。
「…もう、やめだ。帰りたまえ。すべてこちらで善処する。それ故に」
「しかし、これでは、連邦内の国民が…」
「だから、こちらで善処するといっただろう」
「・・・はい。わかりました。失礼します。」
そのまま、その部屋から退出する大尉。
そして、扉がバタンと閉まる。
(…確かに、わたくしめは連邦国家本部大尉だが。)
連邦は死ぬだろう。
人間はいつか死ぬ。それと同じように、やがて星は消え、太陽は滅ぶ。最終的に宇宙ですら、その存在をやめる、ということは、東洋の神秘思想が教えている。
それが真理であるのに、永久に続く国家などあるものか。そして、巨大な犠牲を払ってまで存在しなければならぬ、という国家など、いっこうに消え去ってしまってかまうものか。
大いなる神秘なるモノに帰ろう。軍人でありながら、
名声と出世を望まず、塗中に尾を引く亀でありたいと願う以上、ただ、私の望みはそれだけだ。
====================
かつて勤めていた、懐かしい工場を通り過ぎると、高原地帯に抜けた。
そこには、誰もいない。ただの廃墟だった。確かに民家や古屋敷も多くの街もある。少なくとも、
その跡がある。…しかし今は。僕達の製造した兵器が、命と平和――そのすべてを奪った。
だから、誰もいないし、ここは廃墟なのだ。
「兄さん…」
「ジェイ…。僕達は、また犠牲者を増やしてしまった」
「でも、僕たちが連邦をつぶさないと、もっと増える。だから、この謀反を…」
「ああ、達成しよう。僕達の過ちと業をすべて償う為に」
ジェイソンが、敵を牽制するために、サーチファイアー(スペシャルウェポン・ボム)を古屋敷の近くで使うと、
そのとき、数多もの鳥が飛んでいった。
「ああ、ジェイ。鳥たちに悪いことしちゃったね」
「いまそれどころじゃないよ。兄さん」
「そうか。この謀反は。いや、今も生きるか死ぬかだ」
と、そのように、兄弟はまったく気づいていない。
その前にも、水面に「彼女」は移っているというのに。だが、兄弟はそれどころではないので、その時も気がつかなかった。
自分たちを見下ろすように飛ぶ、何かに。
===============
その、偵察するように、ガレッガシリーズ二機の真上を飛んでいたのは…。
この時代には珍しい、あまりにも強い電気の気配。
鋼鉄とそれで作られた精密部品、当時における最新技術のジェットエンジンが、主な構成組織である、黒光りするボディ。それを際だたせるように、走る赤のライン。
かつて、ウェイン兄弟から「あの子」と呼ばれていた彼女は、豊かな自然とは決して相入れないように、ステルス機の能力を最大限発揮するように、兄弟の真上を静かに飛んでいた。
その静寂は、まるで「己」の中に眠る恐怖のよう…。
遅ればせながら自分たちのしでかしてきたことに気づいた2人は、試作中の4機の高性能戦闘爆撃機を持ち出した。我が身と共にそれを隠すことにより、
連邦の進撃を止めようとしたのである。しかし、一旦始まった戦争がそんなことで終わる訳もなく、
とうとう戦禍は彼らが身を隠していた町にまで伸び、2人は自らの甘さと戦争の現実を目の当たりにする。
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あれから、三ヶ月。
連邦から、僕達の最高傑作である、4機の高性能すぎる戦闘爆撃機を、連邦で同じく整備士や機械技師などをしていた二人の友人に協力してもらって、僕達はその4機の作品と共に、田舎に「亡命」した。
たぶん、彼ら二人の進言がなければ、僕達はずっと連邦に荷担していただろう。僕達の性格は、そこまで陽極性がなく、そこまでの勇気をだせなかったからだ。それに加えて、何度か試運転や試験をして、本気でガレッガシリーズが、非常に連邦に使わせては、マズイ兵器ということが明白にわかった。
ガレッガシリーズ四機を連邦に差し出して、兵器として運用させるのを大幅に変更し、結局、僕達はそれを使わせないために、あえて、今までの仕事を捨ててまで、『亡命』をしたのだ。そうすれば、切り札---最有力の駒(チェスでいうクイーン、東洋の将棋でいう飛車)がないのに、戦争を起こそうとは思わないだろう。
つまり、もう人は死なない。僕達は、安心して枕を高くして眠ることができる。
さぁ、ジェイ。何の心配もなく、昔みたいに、一緒に仲むつまじく、また笑いあって暮らすことができるね・・・。
*
さて、その住み着く亡命先。連邦は機械化、人工化、工業・宅地開発が非常に(とはいっても、まだ初期段階だったけど)激しかったが、僕達の逃げ延びた町とその周辺は、ほんとうに昔ながらの農業や営み、ローマ帝国から続く古代からの森と自然が完全に生き残っていた土地だった。
だが、故郷とはかなり違う場所だ。海もないし、食生活も習慣やしきたりも違う。
しかも、故郷よりかなり人種差別が激しい場所(読者の皆さんに詳しく言うと、欧米には、21世紀の時代でもそういう地域は五万とある)
で、黒人の血が入っている弟がどんな扱いを受けるか、というのも心配だった。・・・まぁ、すんでみないとわからないさ。
*
将来、連邦が詳しく内部事情を知る僕たちを見つけて、それから、刺客や暗殺者を送ってこないように、亡命先に住み初めて、半年たった頃、ガレッガシリーズの本格的な改造と僕たち自身の武装(ある程度だが)を始めた。
---特に、四号機・ワイルドスネイルは、兄さんが僕のために改造してくれた。この雷撃機に、標準装備されることになる貫通弾は、僕たち兄弟が開発した、連邦にも秘匿している門外不出の技術が使われている。
きっと、この技術を連邦に教えていたら、この大陸は中国の秦王朝によく似た統一国家を、偉大なるローマ帝国の次に出現させていただろう。
でも、地方分権的に「分割して統治すること」が、政治とそこに住む人民に、もっとも有益であることを、兄さんから僕は教わった。
とにかく、この貫通弾を造る技術はそれほど強力で役に立つのだ。
*
「なんだか町が騒がしいな」
深夜、家でネズミとあそんでいると、街の方から不自然な爆音や騒音が聞こえた。
「兄さん、なんの音だろう?」
「・・・!いや、これはっ!!」
空襲の音だ!そういって兄さんは外へ飛び出していった。
「あっ!まってよ!」
完全な夜の闇に、兄さんが飛び出していく。
そういう兄さんをみて、僕は、「大事な家族を放っておきたくない!」という気持ちから、兄さんの後を追う。
僕たちの住まいとガレッガシリーズとジャンク機械がおいてある工場は、かなり街の遠くにある。
町の人が、僕たち兄弟を、ガレッガシリーズや連邦からきたことを理由に、よそ物扱いしたこともあるけど、同じく、悲しいことに僕が黒人の血を引いているのもある。
未だ白人以外を受け入れたことが滅多にない、封建的な地域だったのだ。
僕がそんな差別を受けても、兄さんは街の方へと走っていった。・・・なぜだろう?
街につくと、兄さんが街に近い丘の上で、空襲をみていた。不思議とガレッガシリーズで対抗する気は起きなかった。よく考えて、その前にできないことに気がついた。
石油というものは、連邦ではともかく、平和な田舎では、本当に貴重な品で、燃料を「無駄使い」するわけには、いかないのだ。
そう、いろいろと考えているうちに、兄さんに追いついた。
「どうして?僕も兄さんも、なんであんなに差別を受けていたのに・・・?なぜ、街に・・・」
「ジェイ、・・・それは。・・・それは、僕達に食料売ってくれたし、機械関係の仕事を頼んでくれたし、それに、井戸をかしてくれたから・・・。だから、その恩で・・・。どうかして、ガレッガシリーズで迎撃できれば、よかったのに・・・。でも、この地域では、石油は本当に稀少な・・・。」
「兄さん・・・」
「石油さえあれば・・・」
*
朝になり、陽がまた昇る。
あれほど長く激しく続いた、夜の空襲は完全に終わった。
その代わりに、街はただの焼け野原になってしまったけど・・・。
僕たちの詰めは本当に甘かった。
結局、前線を制し、敵の行動や攻撃をすべて封じ込めるような-----たった一機だけであの「飛将」のようにすさまじく強い-------最主力の戦闘爆撃機になるはずだった、そのガレッガシリーズがなくても、あの連邦は大陸統一の為に、僕たちが過去に制作した兵器群を利用して、覇道に沿い、戦争を始めたのだ。
僕たちが見るのは、ただ焼け野原だ。
嗚呼、僕は、なにも考えられず。・・・そう、ただ呆然と。
-----僕は兄さんと、ただ呆然と・・・。
================
時は産業革命から数十年が過ぎ去った頃。場所は「連邦」と呼ばれる軍事国家とその周辺。多くの工場が、
海や空を汚染していても、まだ大部分が美しい自然に覆われている。
====================
「…」動植物達は完全に沈黙している。
しかし、これは黄金に値する沈黙ではない。
たとえるなら、鉛か鉄。
それは完全なる、主張と声の圧殺だ。
私は、とあるアイヌ人の巫女みたいな霊力はない。だが、多少は自然の嘆きや悲鳴がわかる。私じゃなくても、地球上に生きる人間なら誰でも、もっている能力だろう。
しかし、大半を占める多くの人間は、その能力を知らず、駆使することもなく、ただなにも考えず平然と生きているのが、悲しい現実である。
「大いなる神秘が悲嘆している…」
====================
化石燃料を利用して動く内燃機関が生まれて20年ほどしか経たず、一般的なテクノロジーはまだまだ低い。
が、ウェイン兄弟をはじめとする才能と「連邦」の資金力の融合により、軍事技術は恐ろしく発達している。
====================
バカでかい工場がある。
そこは、大型の飛行機が1%の存在だとすると、99%もまだスペースが有り余るほど。
そして、その工場は、とある国でいうと穀倉地と酪農地を兼ねた地方のような、それによく似た広大なアメリカ平野のような場所に作られていたのであった。
ところで、そこでなにを作っていたか、というと。
「スレイヤー?」
「そうです。スレイヤーです」
「あの兄弟が設計したヤツか」
「そうです」
「で?何か?」
「重大な欠陥が見つかりまして」
「どこにあるんだ?それは?」
「エンジンシステム・・・」
彼、工場員がいうには、点検時に整備員が見つけたようだった。しかも、その整備員は、まだ栗色の髪をしたうら若い乙女らしい。余談だが、その娘、この工場では、太股がよく見える短パンで、異性の整備員を悩ませることで有名である。
その情報は、無駄話にしかすぎないが、まぁ、彼女が欠陥を見つけずに試運転しなくて、幸運でよかったということだ。
「エンジンは誰が設計したんだ?」
「例の兄弟です」
「はっ?なにかの間違いじゃないのか?」
「工場長には、真実をもうしました。それより、現場に行けばわかります。」
スレイヤーのエンジン部分をよくみると、部品が複雑すぎて、こんがらがるくらいゴチャゴチャ混乱するような組立方をしている。
現代のとある国でいう、某タイマーで有名な会社の機械製品のように。
工場で、誰よりも機械慣れした工場長も「よくこんなに詰め込んだな」とコメントするしかなかった。
「ほんとに、あの兄弟設計か・・・?」
「ええ、そうです」
「こんなに詰め込んだら、重くて飛べんだろ」
「ですよねー」
「じゃあ、儂等で調整するか。いわゆるスリム化だ」
こうして、工場の人間で勝手に調整して、試運転をしたら、そのスレイヤー、結構性能が上がって、兄弟設計の時より大幅に、機能・運動性ともに向上したらしい。
つまり、この時代にはウェイン兄弟に匹敵するほどの、技術と職人魂を持った人間も、確かにいるということだ。
====================
その大陸の約半分をしめる15の州からなる「連邦国家」。
産業革命以前の時代より、領土を巡って多くの戦いがあったが約20年ほど前に一つの連邦国家が形成され、
現在に至るまで大きな戦争はなかった(小競り合い程度の物は絶えることはなかったが)。
しかしミリタリーバランスの崩壊により大陸全土の占領を目論見、宣戦布告。他国に対しての圧倒的なアドバンテージを保っている。
その軍事的中枢は要塞化されており、いかなる者の侵入も許さない。
==============
「…失礼します」
将校の部屋に、とある大尉が入ってくる。
「何か用か」
「ええ。連邦内の公害状況報告に」
「そうか。では資料を」
しかし、資料は莫大な情報量を擁していた。
(・・・ふざけるな)
将校はそう、顔に出さずメンチを切ったが、どちらがふざけているのかは、筆者はあえて言わない。
それに、一刻も早く、富国強兵を成し遂げたい連邦の官僚である「お偉いさん」に、そのすべてを読破する暇は無い。
「…もう、やめだ。帰りたまえ。すべてこちらで善処する。それ故に」
「しかし、これでは、連邦内の国民が…」
「だから、こちらで善処するといっただろう」
「・・・はい。わかりました。失礼します。」
そのまま、その部屋から退出する大尉。
そして、扉がバタンと閉まる。
(…確かに、わたくしめは連邦国家本部大尉だが。)
連邦は死ぬだろう。
人間はいつか死ぬ。それと同じように、やがて星は消え、太陽は滅ぶ。最終的に宇宙ですら、その存在をやめる、ということは、東洋の神秘思想が教えている。
それが真理であるのに、永久に続く国家などあるものか。そして、巨大な犠牲を払ってまで存在しなければならぬ、という国家など、いっこうに消え去ってしまってかまうものか。
大いなる神秘なるモノに帰ろう。軍人でありながら、
名声と出世を望まず、塗中に尾を引く亀でありたいと願う以上、ただ、私の望みはそれだけだ。
====================
かつて勤めていた、懐かしい工場を通り過ぎると、高原地帯に抜けた。
そこには、誰もいない。ただの廃墟だった。確かに民家や古屋敷も多くの街もある。少なくとも、
その跡がある。…しかし今は。僕達の製造した兵器が、命と平和――そのすべてを奪った。
だから、誰もいないし、ここは廃墟なのだ。
「兄さん…」
「ジェイ…。僕達は、また犠牲者を増やしてしまった」
「でも、僕たちが連邦をつぶさないと、もっと増える。だから、この謀反を…」
「ああ、達成しよう。僕達の過ちと業をすべて償う為に」
ジェイソンが、敵を牽制するために、サーチファイアー(スペシャルウェポン・ボム)を古屋敷の近くで使うと、
そのとき、数多もの鳥が飛んでいった。
「ああ、ジェイ。鳥たちに悪いことしちゃったね」
「いまそれどころじゃないよ。兄さん」
「そうか。この謀反は。いや、今も生きるか死ぬかだ」
と、そのように、兄弟はまったく気づいていない。
その前にも、水面に「彼女」は移っているというのに。だが、兄弟はそれどころではないので、その時も気がつかなかった。
自分たちを見下ろすように飛ぶ、何かに。
===============
その、偵察するように、ガレッガシリーズ二機の真上を飛んでいたのは…。
この時代には珍しい、あまりにも強い電気の気配。
鋼鉄とそれで作られた精密部品、当時における最新技術のジェットエンジンが、主な構成組織である、黒光りするボディ。それを際だたせるように、走る赤のライン。
かつて、ウェイン兄弟から「あの子」と呼ばれていた彼女は、豊かな自然とは決して相入れないように、ステルス機の能力を最大限発揮するように、兄弟の真上を静かに飛んでいた。
その静寂は、まるで「己」の中に眠る恐怖のよう…。